【キーワード7】勇気づけと罰・報酬の対比

●はじめに

アドラー心理学の実践でとりわけ重要な概念が「勇気づけ (Encouragement)」。一方、一般的な指導方法には「罰」や「報酬(ご褒美)」がしばしば使われます。この2つのアプローチは根本的に思想が異なり、それぞれが相手に与える影響も大きく変わってきます。

●罰・報酬によるコントロール

  • : 相手の行動を強制的に抑制する。恐怖や屈辱を伴うため、行動の根本的改善ではなく、「叱られないため」「責任回避」のモチベーションしか生まれにくい。
  • 報酬: 外発的動機づけ。「褒められたい」「ご褒美が欲しい」という気持ちで動くと、報酬がない場面ではモチベーションを失いがち。また、報酬を得られない行動に価値を感じづらくなる。

●勇気づけの特徴

  • 内発的動機づけを重視: 相手の自主性や能力を信じ、成長や挑戦そのものを喜びに感じられるよう働きかける。
  • 横の関係に立つ: 上から目線ではなく、対等な立場で励まし、相手の主体性を尊重する。
  • 失敗や問題を学びに変える: 罰するのではなく、「どこをどう改善すればいいか」「どうすれば次にうまくいくか」を一緒に考える。

●教育や職場での事例

  • 教育: テストの点が低かったときに叱る(罰)よりも、「どうやって勉強した? どこがわからなかった?」と寄り添いながら次の学習法を考える(勇気づけ)のほうが、子どもの意欲を長続きさせる。
  • 職場: ミスをした部下をきつく叱責する(罰)より、「どんなプロセスでミスが起きた? どう改善できる?」と建設的にフィードバックする(勇気づけ)ほうが、社員の成長やチームの雰囲気に良い影響を与える。

●まとめ

「罰・報酬」は外部から強制的または条件付きで動機づける手法であり、相手を長期的に成長させる力は限定的です。それに対し、アドラーの「勇気づけ」は相手の内なる意欲を引き出し、主体性を育むアプローチ。恐怖や欲得ではなく、自己成長や社会貢献への願いを源泉とするため、長期的に見ても本人と周囲双方にメリットをもたらすと考えられます。

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