●はじめに
アドラー心理学の対人関係論では、人間関係を大きく「横の関係」と「縦の関係」に分けて考えます。
- 横の関係: 相互尊重・対等な姿勢がベースとなる関係
- 縦の関係: 支配・被支配など上下の序列が強調される関係
●横の関係の特徴
- 相互尊重: お互いを同じ人間として認め合い、それぞれの価値を尊重する。
- 共同体感覚を育みやすい: 対等なため、貢献し合う意識が生まれやすく、孤立や競争心が生じにくい。
- 勇気づけに適している: 上下関係がないので、一方的に指示や命令をするのではなく、相手の自主性や意思決定を尊重しやすい。
●縦の関係の特徴
- 支配・被支配: どちらが上か下かが明確で、力の優劣が前面に出やすい。
- 競争や劣等感・優越感の温床: 下の立場の人は劣等感、上の立場の人は優越コンプレックスに陥りやすい。
- 共同体感覚が育ちにくい: 「自分は支配される側(あるいは支配する側)」という構図が固定化すると、連帯感よりも対立意識が高まる。
●教育や職場での実践
子育てや教育現場で、子どもを頭ごなしに叱るのではなく、「横の関係」を意識した勇気づけや課題の分離を行うことで、子どもの自発的成長を促すことができます。職場でも、上司と部下が対等に意見を交わせる環境をつくれば、モチベーションや創造性が高まる可能性が大いにあるでしょう。
●まとめ
「横の関係 vs. 縦の関係」は、アドラー心理学における人間関係の大前提となる捉え方です。上下関係が必要な場面もあるかもしれませんが、基本的には相互尊重の「横の関係」をベースにしたコミュニケーションが、劣等感や優越感を生まず、より健全で建設的な関係を育むと考えられています。