【重要ワード1】優越コンプレックス (Superiority Complex)

●はじめに

アドラー心理学で「優越コンプレックス」とは、本来抱えている劣等感を隠すために、過剰に自分を大きく見せようとする心理メカニズムを指します。具体的には、他者を見下したり、権威を誇示したり、過剰に自慢話をするなどの行動として現れるのが特徴です。本来の目的は「自分の弱さや劣等感を隠したい」という防衛ですが、周囲には「高慢」や「プライドが高い」という印象を与え、人間関係に摩擦を生みがちです。

●劣等感との表裏一体

アドラーは「人が感じる劣等感は、成長の原動力にもなり得る」と説きました。しかし、その劣等感を建設的に活かせず、真逆の姿勢で自分を“強く見せる”方向に逃げるのが優越コンプレックスです。

  • 劣等感: 「自分はダメだ」という自己評価
  • 優越コンプレックス: 「自分は偉い」と思い込み、他者を下に見る

この2つは表裏一体であり、優越コンプレックスを強く出す人ほど、心の底では深い劣等感を抱えていることが少なくありません。

●共同体感覚との対立

共同体感覚(自己受容・他者信頼・貢献感)を重視するアドラー心理学において、優越コンプレックスは対極の立場にあります。なぜなら、優越コンプレックスに陥る人は他者との競争や比較に固執し、「自分が上であること」に価値を置くため、相手を仲間として協力する視点を失いがちです。結果的に周囲との連帯感が築けず、孤立やトラブルが増す原因になります。

●克服のヒント

  1. 劣等感を認める
    優越コンプレックスを解消するには、まず劣等感を認めることが第一歩です。自分が何を恐れているのか、何が不安なのかを客観的に見つめてみましょう。
  2. 貢献感を見直す
    他者との“上下”にこだわるのではなく、「自分はどう貢献できるか?」という視点にシフトすることが大切。誰かの役に立とうとする行動が、真の自己価値を実感するきっかけになります。
  3. 横の関係を意識する
    縦の関係(支配・被支配)ではなく、対等な横の関係(相互尊重)を意識しましょう。相手を見下さず、同じ一人の人間として認める姿勢が、優越コンプレックスを和らげます。

●まとめ

優越コンプレックスは「劣等感を打ち消すための過剰反応」と見ると理解しやすいです。この背景には自身の弱さへの不安や怖れがあり、それを克服するにはアドラーのいう「共同体感覚」や「相互尊重」の精神が欠かせません。自分を正しく受容し、他者とも対等な協力関係を築いていくときこそ、優越コンプレックスは不要となり、より健全な自己肯定へとつながっていくでしょう。

タイトルとURLをコピーしました