【重要ワード5】早期回想 / 初期記憶 (Early Recollections)

●はじめに

アドラー心理学のカウンセリングやライフスタイル分析で注目されるのが、「早期回想(初期記憶)」です。これは、幼少期に起こった出来事のうち、今でも鮮明に覚えている印象的な場面を指します。楽しかった思い出よりも、むしろ衝撃的・悲しかった場面が多いことも特徴です。

●なぜ重視されるのか

アドラーは、**「なぜこの記憶だけがはっきり覚えているのか?」**に注目します。人間は無意識のうちに、自分のライフスタイルを補強する情報を選んで記憶にとどめている可能性があるからです。つまり、初期記憶を分析することで、

  • その人の私的論理(世界観・自己観・対人観)
  • 劣等感や優越感のきっかけ
  • ライフスタイルの核となる信念
    を探る手がかりになります。

●過去より現在の目的を重視

アドラーは原因論を否定し、「今の目的が過去の記憶を利用している」と考えます。初期記憶そのものが人生を決定づけるわけではなく、**「なぜ今、その記憶を持ち出しているのか?」**が重要なのです。たとえば、幼少期の失敗経験をいつまでも引きずっている人は、「現状で挑戦を避ける口実」として利用しているかもしれません。

●活用方法

  1. 回想の内容をノートに書き出す
    具体的な場面や当時の感情を思い出し、紙に記録する。
  2. 「なぜ今も覚えているのか?」を問う
    その記憶がどんなメッセージを暗示しているか考察する。
  3. ライフスタイルとの関連を探る
    失敗から学んだ自己像や、周囲の対応に対する思い込みなどが、現在の思考や行動パターンに影響していないかチェックする。

●まとめ

早期回想は、過去を振り返って現在を再解釈するための強力なツールです。自分が抱える思い込みや劣等感のルーツを見つめ直し、必要であれば書き換えることで、アドラーの言う「自己決定性」を高めていくことが可能になります。

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