夫婦 ― アドラー心理学で“支え合い、歩み続ける関係”を育む


はじめに

人生の中で、
最も長く、深く、近い関係。

夫婦は、

  • 喜びを分かち合い
  • 悲しみを支え合い
  • それでもときにすれ違い、
  • ときに傷つきながら、

少しずつ、ふたりだけの道を歩んでいく存在です。

「この人となら一緒に歩けると思ったのに」
「わかり合いたいだけなのに、どうしてうまくいかないんだろう」

そんな戸惑いや寂しさを抱えながら、
ふたりで生きることの難しさと美しさを知っていきます。

アドラー心理学は、
夫婦関係においても、
**「対等な横の関係」「共同体感覚」**を大切に育てることが、
幸せなパートナーシップの鍵だと教えています。

ここでは、夫婦によく起こる3つの葛藤をもとに、
アドラー流のあたたかい向き合い方を一緒に考えていきましょう。


1. 小さなすれ違いが積み重なって苦しくなるとき

◇こんな気持ち、抱えていませんか?

「どうしてこんな些細なことでケンカになるんだろう」
「本当はもっとわかり合いたいだけなのに」

日々の小さなすれ違い。
その一つひとつは小さくても、
積み重なると、心に大きな影を落としてしまうこともありますよね。

◇アドラー心理学での見立て

アドラー心理学では、
人はそれぞれ**違う「私的論理(自分なりの考え方・感じ方)」**を持っていると考えます。

つまり、

  • どちらが正しい
  • どちらが間違っている
    ではなく、

「お互いに違う世界を生きている」

これを前提に対話することが、
深い理解への第一歩なのです。


◇あたたかい解決アプローチ

【ステップ1】事実よりも「気持ち」を聴く

言葉や態度の表面だけでなく、
その奥にある感情に耳を傾けましょう。

「本当は、どう感じていたの?」
そんなふうに、相手の心に寄り添う質問をしてみてください。

【ステップ2】勝ち負けを手放す

夫婦ゲンカに勝っても、心は遠ざかるだけ。

「勝つことより、わかり合うこと」
を目標に、柔らかい気持ちで向き合いましょう。

【ステップ3】「ごめん」と「ありがとう」を惜しまない

小さな感謝と謝罪は、
夫婦関係をそっとあたため続ける魔法です。
意地を張らず、
素直に言葉を交わしていきましょう。


2. パートナーへの期待と現実のギャップに苦しむとき

◇こんな気持ち、抱えていませんか?

「もっと優しくしてほしい」
「もっと家事を手伝ってほしい」

理想と現実のギャップに、
ふとしたとき、がっかりしたり、寂しくなったり。
そんな自分を責めて、ますます苦しくなってしまうこともありますよね。

◇アドラー心理学での見立て

アドラー心理学では、
他者は変えられないという大前提に立ちます。

変えられるのは、

  • 自分自身の受け止め方
  • 自分自身の行動
    だけです。

だからこそ、
相手に期待を押しつけるのではなく、
違いを受け入れながら共に歩む勇気が大切なのです。


◇あたたかい解決アプローチ

【ステップ1】「期待リスト」を手放す

「こうしてほしい」「ああするべき」
という頭の中のリストを、少しずつ手放していきましょう。
完璧なパートナーではなく、
「ありのままのこの人」を受け入れる練習です。

【ステップ2】自分の願いは率直に伝える

期待を押し殺して我慢するのではなく、

「こうしてもらえたらうれしいな」
と、やわらかくリクエストしましょう。
“伝える”と“要求する”は違います。

【ステップ3】小さな喜びに目を向ける

  • 今日、笑い合えたこと
  • 帰ってきてくれたこと
  • さりげない優しさ

そんな小さな喜びを見つけていくことで、
感謝とあたたかさが自然に育っていきます。


3. 役割分担や価値観の違いに悩むとき

◇こんな気持ち、抱えていませんか?

「家事や育児、どちらかに負担が偏っている気がする」
「お金の使い方、時間の使い方、価値観がズレて苦しい」

長い時間を共にするなかで、
現実的な役割分担や価値観の違いが浮き彫りになることもありますよね。

◇アドラー心理学での見立て

アドラー心理学では、
夫婦もまた対等な共同体のメンバーであるべきだと考えます。

  • 一方が我慢するのではなく
  • どちらかが支配するのでもなく
  • お互いの意見を尊重しながら、
    ふたりで協力し合うチームをつくること。

それが、長く続く幸せの基盤です。


◇あたたかい解決アプローチ

【ステップ1】“当たり前”を見直してみる

育った環境が違えば、価値観も当たり前も違います。
まずは、

「私にとっては当たり前でも、相手にとっては違うかもしれない」
と視点を変えてみましょう。

【ステップ2】対話を「勝ち負け」ではなく「チームづくり」に

  • どちらが正しいか
  • どちらが多く頑張っているか
    ではなく、

「どうしたらふたりが心地よく暮らせるか」
を一緒に考えていきましょう。

【ステップ3】できたことに目を向ける

  • 助けてくれたこと
  • 手を貸してくれたこと
    小さな協力にも感謝を伝え合いましょう。
    それが、また次の協力を生む力になります。

まとめ

夫婦とは、

  • 完璧な理解を目指す関係ではなく、
  • 違いを受け入れ、支え合う関係。

アドラー心理学は、

  • 他者を変えようとせず
  • 自分を押し殺さず
  • 対等に、自由に、尊重し合う

そんな関係性こそが、
本当にあたたかい絆を育てると教えてくれます。

今日、あなたがかけた小さな言葉も、
そっと差し出した手も、
きっとふたりの未来を照らしているはずです。

これからも、
完璧じゃなくていい。
ふたりで、一歩ずつ、歩いていきましょう。

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