アドラー心理学の目的論とは?原因論との違い・具体例・実践方法をやさしく解説

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「変わりたいのに、つい同じ行動を繰り返してしまう」「過去の失敗が気になって、一歩を踏み出せない」と感じることはありませんか。そんなとき、自分を責める前に、いつもとは違う問いを持ってみる余地があります。

この記事では、アドラー心理学の目的論について、原因論との違いや身近な具体例を通して解説します。「できないのは本人が望んでいるから」といった決めつけを避けながら、これからの行動を考えるための使い方を見ていきましょう。

アドラー心理学の目的論とは

目的論を理解するときは、最初から難しい専門用語を覚える必要はありません。まずは、行動を振り返る際の問いを「何がきっかけだったか」から「何を得たい、何を避けたいのか」へ、一度切り替えてみてください。

ここで大切なのは、もっともらしい答えを急いで見つけないことです。自分について考える場合も、他者の行動を理解したい場合も、目的を一つに決めつけず、確かめながら扱う姿勢を出発点にしましょう。

行動を「何のためにしているか」から理解する考え方

アドラー心理学の目的論とは、人の行動を、その人が向かおうとする目標や目的との関係から理解する考え方です。過去の出来事に動かされる側面だけでなく、現在から未来へ向かう行動の方向性に注目します。

例えば、会議で意見を言わない場面を考えてみましょう。「人前で話すのが苦手だから」という説明に加えて、「否定されることを避けたいのかもしれない」と捉えるのが、目的に注目した見方の一例です。

もし本人にとってこの見方がしっくりくるなら、次は「安心を保ちながら意見を伝えるにはどうするか」と考えられます。事前に資料へ意見を書き込む、発言内容を短く準備するなど、黙ること以外の方法を検討してみてください。

ただし、沈黙している人が全員、否定を避けようとしているわけではありません。資料を読み込んでいた、発言の順番を待っていたという可能性も残し、目的論を他人の本心を言い当てる道具にしないことが大切です。

目的は、本人が自覚しているとは限らない

目的論でいう目的は、「資格を取る」「売上を伸ばす」といった明確な目標だけではありません。アドラー心理学では、本人が十分に自覚していない目標も想定し、その理解を確定事項ではなく仮説として扱います。

例えば、友人からの誘いを何度も断っている人が、「忙しいから」と説明している場面を想像してください。本人が振り返ったときに、「気を使って疲れる状況を避けたい」という気持ちにも気づくかもしれません。

その場合も、「本当は友人が嫌いなのだ」と結論づける必要はありません。「関係は大切にしたいけれど、休む時間も守りたい」と捉えれば、短時間だけ会う、別の日を提案するといった選択肢を考えられます。

目的を探るときは、自分の中に隠れた悪意を探すような姿勢を取らないでください。「何が心配だったのか」「どのような状態なら安心できたのか」と問い、答えが出なければ、まだわからないままにしておいてもかまいません。

目的論と原因論の違いをわかりやすく整理

目的論と原因論の違いは、同じ行動に対して、どのような問いを向けるかで整理してみましょう。初めから一方を正解、もう一方を間違いとして選ぶより、それぞれの問いで何を考えられるかを見ると理解しやすくなります。

ここでは「以前の発表で失敗してから、人前で話せない」という架空の例を使います。過去の経験を理解することと、これからの参加方法を考えることを区別しながら、自分ならどんな支援がほしいかも想像してみてください。

原因論は背景を、目的論は行動の向かう先を問う

原因論は、ある行動が生じた原因に注目する見方であり、目的論は、その行動が目指す目的に注目する見方です。アドラー心理学では、人の行動を理解する基本的な立場として、後者を採用します。

発表の例なら、「以前、人前で失敗したことが今の不安につながっている」と捉えるのが原因に注目した説明です。一方、「発表を避けることで、再び恥ずかしい思いをする状況を避けようとしているのかもしれない」と考えると、目的に注目した説明になります。

後者の見方を試す場合は、「では、恥をかく可能性を抑えながら参加する方法はないか」と問いを続けてみましょう。少人数で練習する、説明の一部分だけ担当するなど、全面的に避けることとは別の案を書き出せます。

ここで示した二つの説明は、あくまで違いを理解するための例です。「過去を話す人は原因論的だからよくない」と評価せず、その人が経験したことと、これから望むことの両方に耳を傾けてください。

過去を無視することと、過去だけで未来を決めないことは違う

目的論を学んでも、「過去のことは考えなくてよい」と急いで結論づけないでください。アドラー心理学の説明でも、過去の経験が学びや可能性に関わることは認めつつ、今後どちらへ進むかという目標を重視しています。

例えば、厳しく叱責された経験がある人に、「もう終わったことだから気にしないで」と言う必要はありません。まずは、その経験を本人がどう受け止め、今どの場面で困っているのかを確認する姿勢を大切にしましょう。

そのうえで本人が望むなら、「次はどのように扱われたいか」「相談相手には何をしてほしいか」と、これからの話を少しずつ加えていきます。過去を十分に語ることと、今できることを考えることを、無理に二者択一にしなくてよいのです。

振り返りをするときも、「あの出来事があった自分は変われない」という結論で終えず、「今の条件で試せることはあるか」と問いを残してみてください。すぐに答えや行動を求めず、安全な環境を整えることから始める選択も尊重しましょう。

怒りと先延ばしで考える目的論の具体例

身近な場面に置き換えると、目的論をどのように使うか想像しやすくなります。ここでは、相手に強く言い過ぎた場面と、やるべき仕事を先延ばしした場面を取り上げます。

以下は、特定の人の心理を説明する診断ではなく、自分の行動を振り返るための仮想例です。「この行動の目的は必ずこれだ」と当てはめるのではなく、状況や本人の感覚によって別の説明もあり得ることを念頭に置き、自分に合う問いだけを参考にしてください。

怒りの場面では、相手に何を伝えたかったかを考える

例えば、家族の帰宅が遅くなり、連絡もなかったため、帰宅した相手を大声で責めたとします。落ち着いた後で「怒って当然だったか」だけを考えるのではなく、「あのとき、何をわかってほしかったのか」と問い直してみましょう。

「心配したことを理解してほしかった」「次は連絡してほしかった」という答えが、自分には当てはまるかもしれません。その場合、相手を責め続けることと、連絡の約束を作ることのどちらを選びたいか、改めて考えてみてください。

例えば、「連絡がなくて心配したので、遅くなるときは短いメッセージがほしい」と、出来事と希望を言葉にできます。すぐに話せないほど気持ちが高ぶっているなら、いったん会話を中断し、話し合う時間を決める方法も検討しましょう。

アドラー心理学の実践では、感情を単に抑え込むのではなく、対人関係の中での目的を理解し、建設的な表現を探ることを重視します。怒りを振り返る際も、「感情をなくさなければ」と考えるより、伝えたいことと伝え方を分けて検討してみてください。

先延ばしの場面では、避けたいことと必要な支援を探る

仕事の資料を作ろうとしているのに、何度も別の作業へ移ってしまう場面を考えましょう。まずは「自分は怠け者だ」と評価せず、取りかかろうとした瞬間に何が気になったかを書いてみてください。

もし「完成品を見せて、能力が足りないと思われるのが怖い」と感じていたなら、評価される場面を避けたいという仮説を置けます。そのうえで、「完成品として評価される前に、方向性だけ確認できないか」と考えてみましょう。

例えば、見出しだけを作って相談する、十分間だけ下書きする、途中段階で確認を依頼するといった案があります。「立派な資料を一度で仕上げる」から「必要な情報を相談しながら形にする」へ、今回の目標を書き換える方法も試せます。

ただし、目的を探る前に、締め切りや担当範囲が明確か、作業時間が確保されているかも確認してください。指示が曖昧なまま、あるいは仕事量が過大なままであれば、内面を分析することより、条件を整理して助けを求めることを優先しましょう。

目的論を日常で実践するための振り返り方

目的論を試すために、いきなり人生全体の目標を探し直す必要はありません。最近あった一つの出来事を選び、そのときの行動と、次に試したい行動を具体的に考えるところから始めてみましょう。

ここで紹介するのは、日常の出来事を整理するための簡単な振り返り例です。自分の隠れた本音を必ず発見しようとするのではなく、納得できる仮説があるかを確かめ、今の自分にとって負担の少ない選択肢を一つ増やすつもりで取り組んでください。

出来事・行動・望んでいたことを分けて書く

最初に、最近気になった場面を、できるだけ具体的な言葉で書きます。「自分は人付き合いが下手だ」ではなく、「昨日、同僚に相談しようとして、声をかけずに席へ戻った」という形にしてみてください。

次に、その場面で考えていたことや感じていたことを書き添えます。「忙しそうだった」「迷惑だと思われたくなかった」など、思い出せる範囲でよく、きれいに整理する必要はありません。

続いて、「声をかけないことで何を避けたかったか」「本当はどんなやり取りをしたかったか」と問いかけてみましょう。「拒絶を避けたかったが、困っている点を一緒に確認してほしかった」という仮説なら、自分の感覚に合うかを確かめてください。

最後に、事実と想像が混ざっていないかを読み返します。「同僚は迷惑に思っていた」は確認していない推測ですが、「同僚は電話中だった」は観察した事実として区別できます。

目的が思い浮かばなければ、空欄でもかまいません。答えを無理に作るより、どの情報が足りないかを残しておくことを、この振り返りの区切りにしましょう。

目的に合う別の行動を、小さな範囲で試す

望んでいたことが少し見えてきたら、今までの行動以外に何ができるかを考えます。「迷惑をかけずに相談したい」のであれば、「今、五分ほど相談できますか」と都合を尋ねる案を作ってみてください。

その場で声をかけるのが難しければ、相談内容を短くまとめて、時間の候補とともにメッセージを送る方法もあります。どの方法が正解かを決めるのではなく、自分が実行できそうで、相手の事情にも配慮できる案を選びましょう。

試した後は、相手の反応だけで自分の行動を採点しないでください。「希望を具体的に伝えたか」「相手に断る余地を残したか」など、自分で選べた部分について振り返ってみましょう。

もし断られたら、相談する時間や相手を変える必要があるか、相談内容をさらに絞れるかを検討します。一度の結果から「やはり相談できない」と結論づけず、今回わかった条件を次の案に反映させてください。

また、毎回詳しく振り返ることを自分に義務づける必要はありません。負担を感じたら、次に試したい一言だけメモして終えるくらいの取り組み方でも十分です。

目的論を誤用しないための注意点とまとめ

ここまでの内容を使う際は、他人を分析するより先に、自分の行動を穏やかに振り返るところから始めてください。「あなたの本当の目的はこれだ」と伝えるためではなく、自分に別の選択肢があるかを考えるための記事として活用しましょう。

特に、つらい経験や心身の不調については、日常の行動例と同じ感覚で目的を決めつけない配慮が必要です。最後に、理論を使って自分や相手を追い詰めないための注意点と、振り返りの着地点を確認します。

トラウマや心身の不調を「本人の目的」で片づけない

目的論を理由に、「苦しんでいるのは本人がそうしたいから」「仕事を休むのは楽をしたいから」と決めつけないでください。本人が説明しきれない苦痛について、周囲が都合のよい目的を当てはめることは避けましょう。

強い恐怖を伴う出来事の後には、記憶が繰り返しよみがえる、関連する状況を避けるなどの症状が生じ、PTSDとして専門的な支援が必要になる場合があります。こうした反応を意志の弱さと捉えず、生活への影響が続く場合には医療機関などへ相談することが大切です。

また、職場で強い叱責が続いている場面なら、本人の考え方だけを変えようとしないでください。「もっと前向きに考えるべきだ」と促す前に、安心して相談できる相手や、負担から距離を置く方法を一緒に検討しましょう。

自分を振り返ってかえって苦しくなるときも、目的探しを続ける必要はありません。この記事の方法を治療の代わりにせず、困っている状況をそのまま専門家へ伝えることを優先してください。

目的を理解したうえで、自分も相手も尊重できる方法を選ぶ

アドラー心理学では、個人の目標だけでなく、他者とのつながりや協力、共同体への関心も重視します。そのため、目的論を「自分の望みさえかなえば、どんな行動でもよい」という意味で理解しないことが重要です。

例えば、「認めてほしい」という望みがあっても、同僚をおとしめる方法を選ぶ必要はありません。自分の担当した仕事を報告する、必要な評価基準を確認するなど、自分の希望と相手への敬意を両立できる方法を考えてみましょう。

目的論を日常で使う際は、「何を得たかったか」「今の方法を続けたいか」「別の方法はあるか」という順に振り返ると整理しやすくなります。目的を見つけること自体をゴールにせず、次にどう行動したいかまで、自分の言葉で書いてみてください。

まずは、最近の小さな出来事を一つ選び、「あのとき、何を守ろうとしていたのだろう」と問いかけるところから始めましょう。答えがすぐ出なくても自分を責めず、過去の事情も今の条件も大切にしながら、無理なく選べる一歩を探してください。

よくある質問

目的論を理解するには、最初に何を考えればよいですか?

最近の小さな出来事を一つ選び、「そのとき何を得たかったか、何を避けたかったか」と問いかけてみてください。例えば、相談をためらった場面なら、声をかける前に何が気になったかを書き出します。

大切なのは、立派な目的や隠れた悪意を見つけようとしないことです。「相手の邪魔をしたくなかったのかもしれない」という仮説が浮かんだら、自分の感覚に合うか確認しましょう。

答えが出ないときは無理に決めず、次に試せそうな行動を一つ考えるところで終えてもかまいません。

目的論を使うなら、過去の原因を振り返ってはいけませんか?

過去の経験について話したり、当時の気持ちを整理したりすることを、自分に禁止する必要はありません。この記事の振り返りでは、過去に何があったかを大切にしながら、今後どうしたいかという問いも加えてみてください。

例えば、失敗した発表を振り返るなら、「次はどんな準備や支援がほしいか」まで考える方法があります。ただし、つらい経験を無理に思い出す必要はありません。

過去を十分に話したい日も、今の困りごとだけを整理したい日も、自分が取り組める範囲を選びましょう。

怒っている相手に、怒りの目的を指摘してもよいですか?

「本当は相手を支配したいのでしょう」といった目的の指摘は避け、まず何が起き、何に困っているのかを確認してください。相手の内面をこちらが決めつけるより、「どの点を変えてほしいですか」と具体的な希望を尋ねる方法を検討しましょう。

ただし、大声や威圧的な言動を受け止め続ける必要はありません。安心して話せない状況なら、その場で理解しようと頑張らず、距離を置くことを優先してください。

目的の分析より、安全を確保し、落ち着いて話せる条件を整えることを大切にしましょう。

自分の行動の目的がわからないときはどうすればよいですか?

目的を一度で見つけようとせず、まず観察できたことだけを書いてみてください。「返信しなかった」という行動に加え、その前後に考えたことや、相手とのやり取りを思い出せる範囲で記録します。

そのうえで「返事をすると何が起こりそうだったか」と問いかけてみましょう。答えが複数あっても、一つに絞る必要はありません。

どれも当てはまらなければ、未確認のままにしておけます。振り返りが自分への尋問になってきたら中断し、具体的に困っていることを信頼できる人に話す方法も選んでください。

仕事や子育てで目的論を使うときの注意点は何ですか?

相手の行動を見て、「やる気がない」「注目されたいだけ」と目的を決めつけないことが大切です。仕事なら指示や期限が明確か、子育てなら課題の難しさや取り組む環境に無理がないかを、先に確かめてください。

そのうえで、「どこで困っているか」「どうなれば取り組みやすいか」と本人に尋ねてみましょう。周囲が望む行動へ誘導するためではなく、本人の希望と必要な支援を一緒に整理するために使う姿勢をおすすめします。

話したくないときに答えを迫らず、対話の時期や方法も調整してください。

まずは、最近気になった出来事を一つだけ書き、「何を望んでいたのか」「次はどんな方法を試したいか」を考えてみませんか。一人では整理しにくい場合は、身近な相談窓口や心理相談の専門家に、具体的な場面から話してみてください。

相談先を選ぶ際は、対応領域や資格、料金を確認し、安心して話せる相手を探しましょう。

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